こんにちは。キャンパスラボ所属、駒澤大学の安東凜香です。今回は総務省の国際戦略局研究推進室に訪問し、多言語音声翻訳について影井敬義さん、長岡恵里奈さんからお話をお伺いしました!
「多言語音声翻訳の未来」
取材レポート by キャンパスラボ
総務省の描く多言語音声翻訳の未来を取材!
総務省が多言語音声翻訳に取り組みはじめたきっかけ
実は、日本での多言語音声翻訳の研究は30年以上も前から始まっており、総務省関係の研究機関である情報通信研究機構(NICT)が研究を地道に続けていたそうです。その後、日本への訪日外国人数がどんどん増えていき、2013年には1000万人を超えました。
政府としても日本を観光立国にしていく戦略を立てて進めることになり、2020年までに訪日外国人数を2000万人に増やすという目標が掲げられ、ちょうどその頃に日本でのオリンピック・パラリンピック開催も決まりました。そのような時に、総務省として、観光への需要に応えるための多言語音声翻訳技術の発展を目標としたグローバルコミュニケーション計画を策定し、本格的に取り組み始めたそうです。
30年前から始まった多言語音声翻訳の技術の研究は、観光需要やオリンピックでのインバウンドの高まりなど、世の中に必要な要素を取り入れ、どんどん進化しているのですね!
これから求められていく多言語音声翻訳の発展とは?
2014年から取り組まれている最初のグローバルコミュニケーション計画では、短い文章のまとまりごとに翻訳する「逐次翻訳」であれば実用レベルまでの精度向上を実現し、対応言語も拡大してきました。多様な翻訳サービスが実用化・普及して、行政手続・医療・交通・観光等の様々な分野で活用されるようになっています。
これだけでも素晴らしいことですが、訪日外国人数は当初目標を超えて3000万人以上となり、近年ではビジネスのグローバル化の影響により、住民の43人に1人が在留外国人といわれるほど日本で働く外国人が増加しました。
日本企業の海外拠点や日本で開催される国際会議も年々増加するなど、十分な多言語コミュニケーションを可能とする「通訳」へのニーズが高まっています。そのため、多言語音声翻訳技術は2025年に向けて、今までの「逐次翻訳」から、会議やビジネスでの議論の場面にも取り入られるような「同時通訳」に発展させる技術開発を実施していく「グローバルコミュニケーション計画2025」という新たな計画を立て、取り組まれています。
私たちが社会に出たときに、多言語音声翻訳のシーンがどう変わっていくのかと考えると楽しみですよね!
2025年に変わる、私達の多言語音声翻訳のシーン
「グローバルコミュニケーション計画2025」の目標である「同時通訳」が実現される未来では、具体的にどんなことが可能になるのかお伺いしました。日本の多言語音声翻訳の技術は、もともとは専用の音声翻訳機を作ることをイメージしていたようですが、利用者のニーズに応じて、スマートフォンやタブレット端末で使える音声翻訳アプリやパソコンのソフトで誰でも使いやすいような形で実用化されているようです。
実は総務省職員が仕事で使っているパソコンにも、今年からAI自動翻訳の機能が入ったそうです。業務で外国語の文書を読んだり作成する必要がある場合に、訳したい文章を入力したら数秒で自動翻訳されるようです(実演)。
私たちもこれを大学でも使えたら、とっても便利だと思いました!
今から5年後の2025年であれば、技術の発展もさらに進んで、最先端のICTやAI技術が組み合わさった端末が出てくると思います。今のスマートフォンだけではなく、例えばAIスピーカー、腕時計や眼鏡の形をしたウェアラブル端末など、技術の発展によって私たちの身近に新たに取り入れられる端末と同時通訳技術が組み合わさって、高度でリアルタイムな多言語コミュニケーションがより身近に取り入れられるような未来を描いているそうです。
さらには、VR(仮想現実)技術などの最新技術と同時通訳が合わされば、本当にその場にいるようにリアルに外国人の方と交流出来るようになり、海外の大学とのインカレサークルなどが出来たり、未来の大学生活はもっと色々な楽しみ方が出来ると思いました!
多言語音声翻訳の未来において、若者に期待すること
まずは、こうしたAIや翻訳技術など最先端技術に興味や関わりをもってもらえると嬉しいとおっしゃっていました。その上で、新型コロナウイルスの影響による社会や生活の大きな変化があったように、今後も急激に時代が変わっていくとされる中、日本の未来を背負う若い方々には、そうした変化にも対応して先を見ながら、世の中のニーズにこたえるような活躍をしていただけると素晴らしいと思っているそうです。
また、技術の進展によって「言葉の壁」がなく色々な人と円滑に意思疎通が出来るようになると、外国語力よりもむしろ大もとの日本語力、つまり自分の考えをしっかりと持ち、相手に伝えることや、相手の意見をちゃんと聞いて理解することが大切になります。
あくまで翻訳技術はツールであり、大切なことは自分と相手との本質的なコミュニケーションだと思うので、たくさんのことを学んで自分の幅を広げて欲しいと話してくださいました。
最後にお二人から、多言語音声翻訳コンテストの応募者に向けたメッセージをいただきました。
「多言語音声翻訳コンテストは第3回目を迎えますが、年々応募者数が増え、内容も充実したものになってきています。まずは、ご自身が日頃の生活の中で言葉の壁にぶつかった時を思い出し、そんな時にどんな製品や技術があったら嬉しいか、助かるかを、身近に、率直にお考えいただくことで、実用的なアイデアが生まれることを期待します。また、多言語音声翻訳コンテスト第2回の決勝は今年の3月14日で、新型コロナウイルスによる感染拡大の影響から急遽オンライン開催に切り替えることとなりましたが、その中でも数多くの応募者の素晴らしい作品が提案され、関係者のご尽力で無事に開催できました。新型コロナウイルスとの共存やポストコロナも見据えて、新たな時代やニーズも捉えて、世の中に求められていることがアイデアや作品になっていくことも大変重要と思います。国の研究機関や大企業では思いつかないような斬新なアイデアが出てくることを期待しています。」
今回お話を伺ってみて、5年先には誰もがより高度な多言語音声翻訳を身近なものとして当たり前に使っている未来があるかもしれないという事実に、夢が広がりました!
「言葉の壁」がなくなることで世界中の人とコミュニケーションがとれるようになり、私達の生活の中でも、出来ることの幅がより広がっていけばいいなと思います。
また、急激に流れ、変化するような時代の中で日々考え、ニーズを掴むということが大切だと感じました。
皆さんもぜひ、今回の総務省の目指している多言語音声翻訳の未来のお話を活かしながら、自分の中にある「こんなことが出来たらいいな」というアイデアでコンテストに応募してみてください!